穏やかな大晦日前日の朝を迎えた(30日)。
いよいよ今年も今日明日かと思うと、人並みに感慨に耽る。
もっとも、ただ日々の糧を追うだけの1年間だったから、然したる感慨があるわけでもない。
塀の上を歩いているような日々で、どちらに落ちるかその不安との闘いの時間の積み重ねに過ぎない。
塀の向こうと此方に天国と地獄程の違いがあるならまだ救われようもあるが、博打屋の歩く塀の向こうと此方は、少しばかりの苦痛の差があるだけの同じ地獄に他ならない。
『収支不安』は買って出た暮らし向きだし、『終始不安』は人生の伴侶の如く付きまとう。
塀の上を歩きながら『愁思符庵』 への無事帰還を願うのが、博打屋のささやかな日常である。
今日と同じ明日しかない人生と言うものの味気無さなど、人は知らない方が良いに決まっている。
しかし、今日と同じ明日があるなら、それはむしろ良しとしなければならないのが『愁思符庵』の暮らしだ。
民族の大移動は昨日今日で終るのだろうが、博打屋の移動は今日(30日)にかかっている。
立川競輪場で行われる競輪グランプリが今年ラス前の商いだ。
今年は指定席応募の機会を逸してしまったので席が無い。
知人馬主が京王閣場外で座ってやろうと言うので、博打屋は予定を変更してその案を選んだ。
場外とは言え暮れのグランプリは既に年末休暇に入った今日(30日)の開催だから人出は多い。
3人分の指定席を買うために近い博打屋が出向いた。
9時半からの発売だが、9時に着くと既に100人位の列。
幸い一人6枚買えると言うので並び直すことなく買うことが出来た。
昼まで近くの店でコーヒーを飲みながら時間を潰し、他の2人が来るのを待った。
何時もより早いレース参加だが、主力は寺内大吉杯決勝とグランプリである。
明日からの身の振りもかかる商いだけに身が引き締まる思いだ。
しかし、成績はパッとしないまま寺内大吉杯決勝を迎えた。
ここは松岡・山田庸平ラインを狙ったが、人気関東ライン4車で決まってしまった。
杉森・神山・吉澤8-7-1、2510円は1番人気であった。
いよいよグランプリである。
1着総賞金1億円を懸けてのガチンコ勝負は競輪ファンの暮れの風物詩。
誰から買っても当たればプラスになる配当の割れ方である。
既に決めてあったので博打屋は新田・平原・武田のボックスを買った。
押さえは村上からである。
3車ラインが出来る村上が本来なら人気になってもおかしくないが、村上の年齢的なものもあり、人気は平原・武田にやや傾いた。
素直に考えるなら村上が有利である。
前の稲垣にしても、後ろの岩津にしても、今年のG1が取れたのは一重に村上のお陰である。
稲垣の渾身の先行が読めるだけに村上は後ろの岩津にも守られる。
実際レースはその通りになり、ゴール前は平原に引き出された武田との微妙な1・2着争い。
僅かに位置取りの差が出て村上が勝った。
3着は単騎の浅井で3-6-8、41560円の高配当フィナーレ。
博打屋の村上からの車券にはこの組み合わせがない。
知人馬主は武田が勝っていれば2・3着総流しボックスだから何とも惜しいゴール前となった。
暮れなずむ京王閣を後にして3人の足取りは重い。
終わってしまえば村上優勝も納得だが、42歳の最高齢2人のワンツーとは予想し辛い結果だった。
期待の新田は捲り不発であったし、平原は稲垣を捌くのに足を使い果たした。
やはりグランプリともなると激しい闘いとなるので、番手選手が楽になる。
その事を痛感させられた今日のグランプリであった。
調布で残念会となったが、明日(31日)の大晦日残業が確定した。
去年に引き続き川口オートのスーパースター王座決定戦での商い納めとなった。
どこまで続く博打屋の不振と我ながら思うが、毒食らわば何とかだ。
今日と同じ明日に挑むしかない。
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『 競輪グランプリ』
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