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Channel: 梶山徹夫の『愁思符庵日記』
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『卯月尽』

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山では盛んにウグイスの鳴き声が響く朝(30日)。


あっと言う間に「卯月尽」、4月の最終日を迎えた。

ウグイスに混じり、シジュウカラがひときわ甲高く鳴き声を轟かせる。


立夏(5/6)を前に、4月も最後になって、晩春らしさを見せてくれた。


月末と言うのはいつも悩ましい。


諸々の支払いが一時に集中するからだ。


それでも世の中が円滑に進んでいるのは、世間の経済収支がこの時期を基準に動いているからなのだろう。


平たく言うならば、堅気に暮らせば、この月末に出て行く金もあれば入ってくる金もあると言うことだ。



いや、入って来る金があるから、払うものは入った時に払いなさいと言う事か。

何れにしても、ゴールデンウィーク谷間の月末平日。


世の中は慌ただしく暦の差し換えをしている。


開店休業の今週だったが、懸案の陳述書を提出に川崎まで出向いた。


今日(30日)の開廷表を見ると、余り多くないのは時期的なことなのだろうかと思った。


新しい女性書記官が対応してくれたが、簡易裁判所の事務室もレイアウトが変わっていた。


提出書類を前回同様陳述書と題したのを書記官が気にしていたので、こちらも、タイトル変更くらいやぶさかではないが、どうしたものかと相談。


つまり、書記官としては準備書面が妥当と考えているようで、それがどう違うのか博打屋には分からない。


陳述書と言うのは、訴状に対する証拠書類の扱いになるので、第何号証と記名しなくてはならない。


前回提出時に、前任書記官から助言を得、陳述書第14号証として出しているので、それを踏襲したのだが、今度の書記官は準備書面が良さそうな口振り。


気になったようで、裁判官に聞きにいってくれた。


しはらくして戻って来て、このままの表記で良いとなった。


新たな証拠資料1枚と共に無事提出を終えた。


書記官は前回博打屋が不服申し立てをし、再度書面提出の経緯を思い出したようで、一応博打屋が区切った期日ですから、と言うと、ニコリと笑っていた。


「卯月尽」を裁判所詣で終わらせるのは、博打屋としては不本意。


然りとて近場の商い場もない。


せっかく裁判所に来たのだから、参考になる法廷は開かれていないかと見ると、原状回復云々の法廷があったので傍聴した。


博打屋が争っている原状回復かと思ったが、どうやらネットオークションでの取引の争いのようであった。


裁判官と2人の司法委員、書記官と、原告・被告は本人のようだ。


裁判官は初めて見る人で、老獪な味のあるおっさん風情。


いかにもくだけた普通の会話で原告・被告に質問していた。


しかし、原告提出の証拠番号が、裁判官受理の番号と違い、審理が混乱した。


原告がボソボソと言うので中々話が進まない。


裁判官が業を煮やし、書類確認を司法委員たちに任せ退室してしまった。


残された司法委員と書記官が原告と番号合わせ。


37号証まであるようで、訴状はその号証を見ながら判断するので、番号はきちんと照合しないと内容が伝わらない。


原告・被告、双方に提出証拠があるので、甲何号証、乙何号証と、双方合わせると結構な枚数になる。


裁判が紙社会と言われる所以である。


何でも書類にしなければ、裁判の俎上には上がらない。


博打屋の争い程度でも、証拠書類は何通かあり、相手方、つまり、甲・乙提出の号証が合わないと、訴状の内容が伝わらない。


自分で準備書面や答弁書を書くと、この混乱は分からないでもないが、それにしても、原告は自分の不手際にも関わらずふてぶてしい。


ようやく整理がついて書記官が裁判官を呼び戻し再開。


裁判官は原告に今後の審理の進め方を聞いている。


原告は結審には不服そうで、次回7月某日までに、相互に証拠を提出する事で閉廷した。


事案の詳細が分からなかったが、オークションで売買した商品の引き取りや、スカパー等で売買してはならないIDを売ったようだ。


それに対し、原告は引き取りを要求している。


同じような事件で詐欺罪が出されている事の証拠を出しており、裁判官にそれを読んで欲しいとボソボソ言っていた。


原告は詐欺罪で告訴中だと言っていたが、その進展には裁判官の質問にも答えなかった。


被告は関西から来たようでだった。


裁判官に出すべき証拠を指示され、メモを取っていた。

世の中、色々な事で、色々な人が争っているのだなと、我が身を思った。


それにしても、博打屋担当の裁判官と対局に、砕けたもの言いの裁判官だ。



次に傍聴した覚醒剤事件は、何度も傍聴する再犯事件だ。


この裁判官は見覚えがあるが、ものの言い方が穏やかで、にこやかでさえある。


被告への質問も穏やかで、こちらは4ヶ月の拘留中だから、刑務官4人が付いて物々しい。


次回判決と言う。


何の因果で「卯月尽」の裁判所かよ、と博打屋は独りごちながら川崎の銀杏並木の新緑を見上げていた。

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