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Channel: 梶山徹夫の『愁思符庵日記』
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『青梅の悲劇』

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春の嵐から明けた朝、明るい空を期待したが期待はずれ(14日)。


日はすぐ雲に遮られ、曇よりと寒い午後となった。


『東風(こち)吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春を忘るな』


梅と言えばこの歌。


大宰府に左遷される菅原道真が京の屋敷の紅梅に贈った歌。


京を離れる無念を庭の梅に託している。


季語の世界ではとうの昔に梅の季節到来だが、家々の梅は今を盛りと咲いている。


梅は春の花の中でもいち早く咲き、強い香りを漂わせる。


日本にはなかった木で、古代中国から漢方薬(烏梅)としてもたらされたものと言う。


その梅の効用は今さら語るべくもない。


去年初めて挑戦した梅干し作りは、今その成果を味わっているし、3年前の梅酒は晩酌の締めとなっている。


そんな愛すべき梅だが、とんでもない事態が起きている。


先日立川駅で手にした青梅・吉野梅郷のチラシは、例年行われる梅まつり案内で、明日(16日)の観梅市民まつりをピークに30日まで催されている。


吉野梅郷は青梅線・日向和田駅を中心とした梅の里であり、博打屋は何度も訪れた地。


細くなった多摩川上流を挟む丘陵地に梅の公園があり、石神前駅・二俣尾駅にかけて壮観な梅の里をなしている。


この日向和田を起点に多摩川沿いを上流に歩けば、吉川英治記念館に辿り着く。


四季折々、奥多摩ハイカー達のメッカとなる一帯だ。


その吉野梅郷の梅まつりが、今年で終わると聞いて驚いた。


チラシによると、この地の梅の木がウメ輪紋ウイルス(PPV)に感染していることが判明し、既に相当数伐採されていると言う。


根絶には伐採しかないようで、青梅市と生産農家の苦渋の決断となったそうだ。


既に梅の里・吉野梅郷の再生計画が進められている
が、何度も訪れたあの梅の里が姿を消すとは痛ましい。


やがて各地にウイルス伝染の危機でもある。


青梅の悲劇が広がらぬ事を願うのみだが、残念な自然の営み。


近々最後の梅を見に行きたい。

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