大曲の客人となり4日目の朝を迎えた(17日)。
前夜の雨は途中から雪に変わったが、暖冬に違わぬ心もとない雪。
今朝はその雪も解けて霙だが、雪もよいの空が広がって、いかにも秋田の冬の空。
訪問先の老人ホームで2晩目を過ごした博打屋は、初日より回数の少なかったトイレ介助に助けられたが、それにしても睡眠は浅い。
博打屋が睡眠不足なら、当の本人である入居の古老は足の浮腫の治療薬に利尿剤が入っているせいか、極度の頻尿で尚更睡眠不足。
おまけに便秘と言うから、本人はトイレに行きたがる。
施設を転居して1ヶ月が過ぎ、そろそろ不満が蓄積している様子だ。
我が儘と言ってしまえばそれまでだが、何かにつけて前の看護師はどうやっていたとか、ヘルパーがどうだのと比較して愚痴を溢す。
思い込んだら一途なのは老人の特徴だが、まさにその通り。
先日聴講した、地域で守る認知症と言う講演の中でも、現実に直面する家族の話しを聞いたが、「尽くしても尽くしても報われない」のが、介護する家族や身近な人の切ない悩みであることが少し解る。
古老は90歳を迎える高齢で、認知症と言うより、耳が遠く自分の世界にしか関心がない。
したがって会話そのものが余り成り立たたず、相互に意志疎通が計れない。
外面が良いのも老人の常に洩れず、身内や身近には別な一面を見せる。
前夜(16日)は久々の外食に驚くべく食欲を見せ、帰室後は就寝も遅かった。
博打屋と二人の夜である。
今回の転居に至るまでの話や、家族の話しなど、積もる話しが一気に吹き出した。
何度か聞いたことのある内容も多く、やはり老いの一徹を思わせるばかりだった。
朝は別途にお手伝いさんのお婆さんを隔日で雇い、身の回りの世話をしてもらっている。
2晩目を過ごした博打屋にとって唯一不自由なのがお風呂であった。
ホームの部屋に無いのは風呂だけである。
その事を気遣い次男馬主が朝やって来て、博打屋お気に入りの日帰り入浴温泉「西遊記」に連れていってくれ、しばらく自由にさせてくれた。
霙が雪に変わりつつあり、山々にようやく雪が積もる気配だった。
これですら12月の大曲の風景ではない言う。
朝の露天風呂でホッとして睡魔に襲われていたが、週始め(14日)の「師走旅立ち」からあっという間の4日間が思い起こされた。
有料老人ホームの宿泊体験も貴重ながら、至れり尽くせりの「客人」博打屋へのもてなしの日々。
今夜(17日)は次男馬主が用意してくれた比内地鶏鍋を古老の夕食に合わせて施設の部屋で食べる事となっていた。
一昨日のウサギ肉の煮物に続き、知人女性の母親が事前に手作り、その鍋と卓上コンロを持って知人女性がホームを訪れる段取りだ。
その前に博打屋はひとっ風呂を浴び、午後からの本業復活の算段をしていた。
一昨日(15日)のサテライト六郷での伊東競輪決勝商いが不発に終わり、昨日(16日)から立川競輪場外発売が始まっていた。
昨日は睡眠不足と霙混じりの雨に気勢を削がれ、開店休業の博打屋であった。
今日は何がしかの商いをしなければ、来る週末、ラス前中山競馬が寂しくなる。
次男馬主は、自社のタクシー運転手人手不足を自らの運転でカバーしながら、我が儘な父親と、厄介な「客人」の相手で巨体をフル回転である。
朝風呂の博打屋を迎えに来てホームに寄ったり、比内地鶏を届けに知人の実家に行ったり、博打屋所望の蕎麦屋に行ったり、挙げ句はサテライト六郷に博打屋を運んだりと、踏んだり蹴ったり。
しかし、大曲郊外の知人実家は折からの雪で何とも美しい田園風景となって博打屋を喜ばせてくれた。
博打屋にとっては今年の一番雪である。
サテライト六郷に立川競輪準決勝を商いに行った博打屋だが、次男馬主は車で仮眠しているからと、こちらも睡眠不足がありあり。
今日(17日)はホテル泊まりの予定の博打屋だったが、明日(18日)の帰京を控え、古老を独りにするのも気がひけたので、急きょ施設泊まりとすることにした。
連日博打屋の送迎に夜の飲酒が出来なかった次男馬主が、今夜は付き合うと言う事だったが、夕方比内地鶏鍋を古老の夕食に届けた後、我々の晩餐に出掛けた。
連日のダダミ(鱈の白子)を求めて、初日に訪れた店に出向いたが、残念な事に仕入がしてなかった。
しかし、刺身や焼き鳥のとても美味しいお店で、「客人」最後の晩餐は贅沢三昧に更けていった。
門限までの二次会は、知人母娘がやっているお店での「客人」。
次男馬主も今回初めてのお酒でほろ酔い。
しっかりと自社タクシーをご指名で賑わうお店を後にした。
部屋に戻ると、古老が車椅子に座り、ぽつねんと博打屋を待っていた。
その姿を見て、博打屋の心も雪もよいとなった。